2月と3月をつなぐトンネル
冬の将軍と、春風ちゃんが上空でバトルを展開してる。
一進一退。
花が咲きはじめる季節の到来。
願いは、春風ちゃんのカムバックアゲイン。
寒いのはもうこりごりだ。
学校の食堂で、1人の男子生徒に食後のデザートをおごってもらっている。
といっても、ぶどうと野菜混じりのスムージーが目の前においてあるだけだが。
「佐々木さんから、お話があったかと思いが、まあ、僕に大役の白羽の矢が立ったということですね。
石動 リョウと申します。よろしく。」
握手を求められた。その右手に剣は持っていないというサインか。
「どうも。まあ、何というかお洒落な食堂だな。カフェテラス。女学生と2人で語り合いたいな本来ならば。」
如才なく微笑み、少し誇らしげに胸をはっているハンサムで目立つ男とはあまり長時間共にいたくないが、慣れる必要があるな。
「自分の通っている学校の設備を褒められるとやはりそれなりに嬉しいものですね。」
「ところで、俺には、2人分の前世があるんだってな。転生は3回目だとか。」
「そのとうりです。
まあ、前世というか、我々はパラレルワールドに迷い込んだ住人のような者だと、そう言ってしまった方がしっくりくるのかもしれません。あなたは、この街で暮らしていて何か自分がこの街に惹きつけられていると感じることはないですか?僕はあります。」
「ん?そうだな。初めて訪れる場所だが、妙な懐かしさを感じることはあるな。正直なところ。」
「僕もそのような印象をもっています。
実は僕もあなたと同じ転校生なのですよ。
そして、いまはたまたま高校生としてこの世界に存在していますが、あなたの過去の2回のシークエンスは、同じ属性ではありません。」
頭大丈夫か?正気か?SFの読みすぎですか?
怪訝な表情はそのまま石動に伝わってしまったようだ。
「僕は至って正気ですよ。
精神疾患でも、ないのでご安心を。
そうですねえ。
1回目のあなたは、大きな地震が起こった時、崩れた建物の中で亡き人となりました。
2回目のあなたは、暗殺されてしまたようです。言ってはマズイことをニュース番組のゲストとして出演した際に口外してしまったようです。誘導されて口をすべらせてしまったのかもしれません。
公式の記録ではそういうことになっております。
事実確認をしたかったのですが、残念ながらあなたは過去の記憶を引き継がれてはいないそうですね?」
「そうさ。俺という存在は、思春期まっただなかの健全な一男子高校生さ。だまっていれば、アンタもそうみえるよ。」
石動は吹き出した。
「ふふっ。これは。これは。褒め言葉として受け取っておきましょう。
さて、
今日の放課後、僕たち2人は我々のクラブの部長であるところの佐々木さんから呼び出しを受けております。
そして、ひとつの指令を受けることになるでしょう。
僕、石動はあなたのフォローをさせていただきます。」
石動は、片手を上げて別れの挨拶をすると、自分の所属するクラスの教室の方角へと消えてしまった。なんでも次の授業では、演劇の主役を務めているのだとか。
最後に死ぬほどどうでもいい情報を与えてくれた。
というか演劇ってどないなカリキュラムやねん。
古典の授業のあと、音速で放課後がやってきた。
「アンタたち2人で次の土日にデートね。
土日の間にムータロウ=トロールの手がかりを見つけなさい。その名前に覚えのある人間でも、動物でも、聞き取り調査を行うの。
これは採用テストよ!月曜日にレポートを提出すること!」
冗談だよな?おホモだち一直線かよ。
レポートってなんだよ!