亡き王女

ぬるくぼんやりとした薄く淡く生暖かい教室の中を思い出だしていた。

キラキラと瞳に撃ち抜かれる日、緑も燃えるようににじんでいた。

「今日という日が終わる前に一緒に食事でもしないかな。」

僕は、彼を食事に誘った。

「東京を出た方がいい。」

「新しい外国のような街へ行って、そこで再びコーヒーをいれるんだね。」

「そう。雨、降りだしたみたいだね。」

七月が終わる日。新しい旅立ちの前日だった。

「最後にテレビであれを見ていこう。撮りためたやつがあるんだ。」

鉛に足を取り込まれてもいつか抜け出せるチャンスが来る。

「このリアルな街の道の描写を忘れないでいておくれ。」

「忘れないでおこう。」

「新しい街で素敵な女の子に出会えるといいね。」

「そのために行くわけじゃない。動きが遅くなってきてつまんなくなってきたから

頭をしゃっきりさせるために行くんだ。」

スパゲッティをくるくる巻き、口にそれを運ぶと良く租借し、彼は何気ない顔でいった。

「雲の切れ間からピンクの月がのぞいていた。それは夜明けだった。公園でふとそのきになって旅立つことに決めたんだ。」

「僕のアドバイスにしたがったわけではないな?」

「ちがう。」

「OK。よろしい。あたらしい世界の始まり。うん。何年か前にネット上の知り合いに会いにそこへ行ったときは新鮮だった。君も新鮮な場所で新たな出発だ。そしてそこで、大切な何かをつかみとり、それを夢へつなげる。」

「またな。」

「恋人が待っているから先に帰る。」

テレビで見た映像を思い起こしながら、車で帰るべき場所へ。

素敵なコーヒーを淹れられるやつはなんにんかいる。

収まるべき空間にしっくりとなじみ、太い見事な柱と立派な時計を背にお客さんを向かい入れる。

僕はなぜか若返り冬のコート姿で僕のことを好きな女の子と過ごし、時々コーヒーを飲む。