真実の闘い
記憶にないことへの質問は困る
彼女はそうこたえた
遠くにあるあの街へいってみる必要がありそうだ
どうやら全てはそこからしか生まれない
部屋を出ると、新しい風が吹いていた
よく晴れた日にもう一度はじめる必要がある
喫茶店にいる日曜だった
白いシャツの女の子を眺めることしかやることはなかった
カップを下げて、あたらしいお茶を入れてくれる腕が細くてとても綺麗だった
新宿から中野に歩き、喫茶店に入り、また新宿まで歩いた
今の街にこのままいるなら
週末は
この過ごし方を繰り返すしかない
つまらないしきたりはくたばれ
Rの館は、窮屈なしきたりに支配されていた
クリスマスに良いイメージはない
趣味の悪い装飾が並ぶだけだ
そのガレージは壁がぶち抜かれて、キャンプと呼ばれていた
寿司を作りながらのパーティなど開かれているらしい
キャンプに住み着いてもいい
世界は生まれ変わる
洞穴に隠れていても変化は訪れる
青空に柿の木があり、山がそびえている
これが一番
ぶり大根、里芋の煮っころがし、レンコンのきんぴらを作ってみた。
生姜を入れたスープも作ってみたが強烈。
孤独はファンタジー
20代の頃、夜の窓を眺めながら、虚ろな気持ちで聞き流していた音楽が、気になりふっと口をつく。
裸で、草をむしる、孤独はファンタジー
今のままでいい
今のままでいい
棚を漁り、引っ張り出してみると
なんと、その曲にタイトルなどなかった。
そもそも、アルバムの20以上の曲すべてにタイトルがついていなかった。
歌っている男の名前だけが書いてあり
青空のなかに、笑顔でたっている男がいるだけであり、雲などなかった。
夜も夕暮れも昼も、その音楽はただ透き通っていた。
助手席の彼女には、お経にしか聞こえず、それはかつての自分とあまりかわらないが
いま、音楽は空気のように身体に入ってきた
いまのままでいい
裏声でギターを弾く、あこがれのアーティストの実家の二階で、録音されたのだと書いてある
僕を導いていたその音楽家は、彼のことを、草むらのなかで見つけたステキな昆虫だと
記している
天才がいたのだと
空気を吸うように
心をあらわしている
歌声は空に吸い込まれていく
天才で狂っている
突き抜けるような青さは、日常のどこにもいない
いまのままでいい
孤独はファンタジー